個人目標は必要なのか?

  • 従来型の個人目標という存在がチームワークを妨げる
  • 個人目標は組織における役割と責任を表現するもの
  • 手段の目的化を防ぐことで個人目標が活きてくる

新年度が始まり、1ヶ月が経過したという法人・組織の方も多いのではないでしょうか?
この時期は、組織全体の目標と部署で掲げる目標を踏まえて、私の今年の目標(個人目標)を立案する時期だという法人・組織も少なくないと思います。
今回は、この『個人目標』について触れていきたいと思います。

まず、個人目標を人事考課に活用している法人・組織も多いですが、人事考課と個人目標を安易に連動することは、非常にリスクがあると考えています。
それは、個人目標は決して平等ではないからです。

上司の立場として考えると、優秀な部下には、高いハードル(目標)を掲げて仕事に取り組んでほしいと期待するのが一般的な感情ではないでしょうか。逆に、伸び悩む部下には、低いハードル(目標)を掲げて、小さな成功を重ねてほしいと願うことが一般的な感情ではないでしょうか。

そうすると、優秀な部下と伸び悩む部下で、立案する目標の難易度は異なります。これを目標管理制度の中で設定し、目標の達成度は人事考課にも影響し、賞与や昇給にも反映されるとなると、難易度の高い目標を立案することは得策ではないとスタッフは気づくはずです。結果として、本来は高い目標を掲げてチャレンジしてほしいと思っている部下であっても、無難な目標を掲げるにとどまり、結果として組織の成長スピードは鈍化していきます。

さらに、個人目標には“自分さえ良ければいい”というスタッフ感情を生んでしまうリスクもあります。

医療や福祉サービスは、チームでサービスが形成されるもので、決して、スタッフ1人で完結することはありません。職種間の連携や、同職種内でのサポート関係が正しく作用して、患者・利用者に対するサービスが成り立ちます。
そんな時に、個人の目標を意識したスタッフばかりだと、どうなるでしょうか?
おそらく自分のやりたい仕事(やるべき範囲)は一生懸命やるが、そうでない仕事は、それなりになってしまうのではないでしょうか。

では、個人目標は必要ないと言い切っていいのでしょうか?

これは非常に難しい論点です。
スタッフ個人の感情に着目すると、「私はこんなに頑張りました」「私は、今年、こんな成果を出しました」という個人の努力や貢献を評価してほしいという感情は、とても強いのではないかと思います。
それを評価できない人事制度だと、優秀な人材はシラケてしまい、モチベーションが低下するでしょう。さらに、努力したりチャレンジすることを止めてしまうかもしれません。
最悪の場合、職場に嫌気がさして退職してしまうかもしれませんね。
そういったことを防ぐためにも、個人目標というのは必要なのかもしれません。

個人の貢献度合いや努力の度合いを評価するためには、より平等な基準があり、それを目標にすることが望ましいと考えます。
例えば、「中堅の外来看護師なら、この程度の業務は単独で遂行してほしい」とか「主任なら、この役割は果たしてほしい」というような基準です。ここには個人の能力や性格などは一切反映させずに、組織内の階層における期待値や責任を課業にして基準化し、その基準に対してどうだったかを評価するということが、最も平等と言えるでしょう。

最後に、個人目標(目標管理制度)というのは、何のために導入しているのかを客観して考えることも、マネジメントにおいては大切だと考えます。

個人のパフォーマンスを評価したいために個人目標(目標仮制度)に取り組んでいると考えられる法人・組織も少なくないと思います。
では、何のために個人のパフォーマンスを目標化して評価するのでしょうか?

そこには“スタッフの成長を促進する”とか“スタッフのモチベーションを向上させる”といった目的が内在されているのではないでしょうか。そうであるならば、“スタッフの成長が促進されたか”や“スタッフのモチベーションが向上したか”ということについて振り返り、今の制度を良化していくことがマネジメント層に求められるアクションです。

個人目標や目標管理制度は、あくまでも『手段』です。
「何のために、それをやるのか」という『目的』から目をそらさずに、『目的』を達成するためにどうするべきかという視点を常に持ち続けて、柔軟な発想で制度を見直していくことが大切です。

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