“指示待ち症候群”からの脱却を図ろう

  • あなたの組織は、指示待ち症候群に陥っていませんか?
  • 組織における事務スタッフの役割は変わってきている
  • スタッフのコミュニケーション能力を高めるために“組織全体としての努力”が必要

先日、ある講演会で、講師の先生が冒頭に以下の3点を述べられました。

  1. 初めに質問をした人は偉い!!
  2. バカな質問をした人は偉い!!
  3. 関係ない質問をした人は偉い!!

私は思わず「なるほど~」と感じました。
少しだけ説明を加えますと、まず1点目の『初めに質問をした人』というのは、場の空気を作る勇者です。誰かが話すと、次の人が続きやすくなり、他の人からも質問が出てきます。
2点目の『バカな質問をした人』というのは、聴講者側の質問ハードルを下げる勇者です。「こんなつまらないことを聞いてもいいんだろうか」と思っている聴講者に勇気を与えます。
3点目の『関係ない質問をした人』というのは、講師が話した内容を広げる勇者です。話が広がっていくと、講義の内容にぐっと深みが出ます。

翻って、医療機関や介護福祉施設では、スタッフの人たちが消極的に働いていたり、物静かな姿勢で“事なかれ主義”を貫いていたり、指示されたことしかしない“指示待ち症候群”に陥っていたりすることは珍しいことではありません。

そういう組織に限って、理事長や院長という組織のトップの方は、「スタッフから提案がない」「スタッフが何を考えているのか分からない」ということを口にされます。特に、事務スタッフに対する上記のような不満は強いのではないかと感じます。

理事長や院長という、いわゆる経営層の方々は、自分たちの病院や施設をどの方向に進めていくのかを決める決定者です。つまり、物事を決断することが業務のベースにあると言えます。
その他のスタッフは、経営層が決定したことを実現していく(遂行していく)役割を持ちます。

多くの組織では、このような組織形態になっていますが、医療機関については特にこの傾向が強いです。背景には、医療を提供すること自体が、医師の指示に基づいて他の職種が業務を進めていくという形態になっているからでしょう。

しかし、医療機関や介護福祉施設の事務スタッフはどうでしょうか?

一昔前から、事務スタッフの経営マネジメント上における役割は大きくなってきています。それは、複雑化する経営環境の中で、経営者(または経営陣)が全てを把握し、理解することが難しくなってきているからです。

これからの事務スタッフは、経営陣が思い描く将来ビジョンを実現するために、具体的な作戦を考え、その作戦を遂行していくために組織の潤滑油として行動できることが求められるでしょう。
そして、そのような働き方ができる事務スタッフが、組織の中心的な存在となり、それに見合う対価を得ることができると考えます。

ですが、理事長や院長、事務長が指示をしないと動かない、考えないという組織も多いのではないでしょうか?
ひどい場合、経営陣が指示をしても動かない、考えない。そして、できない理由ばかりを並べているといったケースも少なくないでしょう。
私は、このような組織を『指示待ち症候群』に陥っている組織と言っています。

指示待ち症候群からの脱却は、やはりスタッフの“コミュニケーション能力”を高めることです。

経営陣の思い描く将来ビジョンを聞き取る『傾聴力』であったり、「だったら、こんな方法はどうですか?」「こういうアプローチなら実現できるかもしれません」というような『提案力』であったり、周囲の人たちを巻き込んでいく『説得力』や『調整力』であったり、これらは全て自分が主体となってアクションする能力です。
「言われてないから、やらない」とか「よく分からないので出来ない」といった“指示待ち”な姿勢は捨てるべきでしょう。

一方で、経営陣の方にも一定の覚悟が必要となります。

部下であるスタッフが意見してくることに対して、感情的になったり、全否定したりしていたら、部下のコミュニケーション能力は高まらないでしょう。また、経営陣がいちいち介入して部下の主体性を奪うことも同様です。
指示待ち症候群からの脱却には、経営陣も我慢が必要になります。

スタッフが主体性をもって仕事に取り組めるように、一定レベルの裁量と権限を委譲させながら、共に課題を乗り切る、共に将来を創るという姿勢で部下に向き合えば、自ずと指示待ち症候群から脱却できると信じています。

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