~002:医療経営を学べる大学院の意義は~
私が大学院で医療マネジメント(和名:医療経営・医療管理)を学び、修士号を獲得したのが2016年。既に気づいたら4年近くが経っているのだが、これを早いとみるか遅いとみるか。とにかく時間が過ぎるのはあっという間という印象を持っている。
私自身が医療経営や医療政策を学ぶべく大学院へ入学した目的は、もっと大きな仕事がしたかったから、あえて具体的に言えば、病院を経営の立場から見て見たかったということにある。入学当時はざっくりと医療系のコンサルタントへの転職ぐらいにしか考えていなかったというのが本音であるが、大学院というものは積極的に活動すればするほど機会を得ることができるフィールドで、大学の名前とこれまでの経験をPRしつつ色んな場所の門を叩くことで、新たな経験を得ることができるのである。
私の場合は、1つは、在学中に医療系のコンサルティングファームで働く機会を得たことである。もちろん大学院での授業や課題、修士論文の研究など忙しい時間でもあるが、自分から飛び込んだ新たな場所でもあり、また大学院に掛かるお金も並大抵でない。社会人入学組にとっては必至にならざる負えない環境でもあり、せっかく得た機会を逃すのは、わざわざ会社を辞めて大学院に進む判断をした人間にとって、正しい選択とは言えない。結局、大学院を卒業するまでの期間、約1年半ほどの間、コンサルティングファームで在席していたことになり、コンサルならでは資料の作り方や分析方法、プレゼン手段、コンサルフィーまで、いろいろなことを学ぶことができた。
2つ目は、ビジネスコンテスト等への参加と起業である。社会人入学であっても、学生は学生である。よくからかいで「交通費の学生割がつかえるよね?」という話が出てきたりするのだが、本質はそこではなく、学生の身分だからこそ、参加ができるビジネスコンテストやハッカソン、データコンクールなどが存在するということである。また、学生ゆえに時間を捻出することができたり、同期の仲間との企画や立案ができるという点も、メリットである。このことからも、大学院在籍中に積極的に課外活動をどれだけできるかは、今後の自身のキャリアプランにも影響するのではないかと考えている。私の場合で言えば、学生の身分を用いて、ハッカソンに参加し、そこでチームを組んだ仲間とのプロジェクトは準優勝となり、プロダクトとしてリリースすることができた。その後、大学院の同期のメンバーも巻き込み、学生起業を行い、現在も医療機関で働く傍ら、ソーシャルベンチャーの代表として、時間を見つけては活動している。
最後に、大学院でのインターンシップである。私が入学した大学院では、全ての学生がどこかの組織で1か月以上のインターンシップを行うことが規定されていた。特に、医療マネジメントの専修であったこともあり、医療系の組織でインターンシップができる仕組みであった。既に社会人として世の中にでた身としては、いまさらと思う方もいるかもしれないが、これまで関わったことがない組織や団体の内情を知ることができる機会は、インターンシップならではと思う。特に、大学生のインターンシップとは異なり、大学「院」生となると、それなりに戦力になる可能性もあるため、受け入れ先によっては大きな期待を持っていることも少なくない。事実、私の場合は、八王子市にある大手医療法人へインターンシップへ行ったわけだが、臨床現場での見学や体験に加えて、現場より課題を提示され、病院として新たに始めたいある事業(理事長肝入りのプロジェクト)の提案書を作ってほしいということであった。もともとコンサルティングファームで出入りしていたこともあり、分析や提案書の基礎は学んでいたこと、加えて大学院で医療政策や医療マネジメントの基礎を学んでいたこともあり、地域の分析や社会的な流れ、診療報酬の状況、病院の内部環境の分析を行い提案書作成、プレゼンまでこぎつけたという具合である。結局、大学院生活が終わった後、そのまま就職するのがこの医療法人になったという経緯からすれば、この時の提案書はそこそこに破壊力があったのかもしれない。
総じて、私自身は医療経営や医療政策を学ぶことができる大学院へ入学したわけだが、振り返ってみると、大学院自体はビジネススクールのようにバリバリにケーススタディを行うわけでもなく、インプット中心の講義であり、紙のテストもあるという具合で、アカデミック要素の強い大学院であったと言える。これは医療経営(医療マネジメント)という分野が学問・研究分野として成熟していないことや、一方でビジネス的視点でもって検討されることが少ないということもあるのかもしれない。その意味でも、医療経営をうたった大学院で学ぶということは、大学院の中で踏みとどまって講義だけを聞いていただけでは、新しいチャンスを得るのは難しいのではないかと感じている。もちろん、大学院のネームバリューや修士号を持っているという履歴書的なメリットはあるにしろ、スキルやノウハウなどの実践的なことは、あらためて就職先で学ぶということでは、社会人入学組としては、ことさら遅いと思っている。そのような意味でも、大学院で学ぶ価値は、いかにして、その期間に積極的な活動ができるか、これによりその価値が決まるのではないかと思う次第である。
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