- 患者・利用者は神様なのか?
- まずは“心構え”を育む
- 他業界からの学びを取り入れる
早いもので2021年も4分の1が経過しようとしています。
4月になると多くの法人・事業所で新入職員を迎え、オリエンテーションや教育プログラムが行われるのではないでしょうか?
今回は、その教育プログラムでも必ず触れられるであろう“接遇”について触れたいと思います。
法人における接遇教育は、お辞儀の仕方や言葉遣いといったベーシックな接遇というものを新入職員に理解させるというような内容が大半かと思います。
しかし、この“接遇”ということも時代の流れと共に変化してきていると感じています。
医療がサービス業であるという論調が強くなってきた平成以降、『患者をもてなす』という価値観が業界に流れていきました。
その結果、患者の権利主張(時には無理難題)を受け止めることが善とされる風潮が強まり、“モンスターペイシェント”という言葉も生まれました。
それと同時にスタッフの中では、患者や利用者の過度なニーズに対応すべく本来業務でない部分で労力を割き、スタッフは本来的ではないストレスを抱えるようになりました。
その揺り戻しとも言えると思いますが、ここ数年は、『患者の権利』ではなく『患者の責務』や『患者の責任』といったことを掲げる医療機関も増えてきました。
「お客様は神様です」という言葉がありますが、これは演歌歌手の三波春夫氏が使われていたフレーズです。しかし、その真意に触れず言葉だけが独り歩きしているのではないかと思います。三波春夫氏のオフィシャルサイトでも同様のことが記載されています。
そして、その真意についてこう書かれています。
三波本人が生前にインタビューなどでこのフレーズの意味を尋ねられたとき、こう答えておりました。
『歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできないと思っております。ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。ですからお客様は絶対者、神様なのです』
(三波春夫氏 オフィシャルサイトより抜粋)
つまり、『1人のプロフェッショナルとして、常にベストなパフォーマンスを発揮するために、お客様(患者や利用者)を神様と見立てるという“心構え”が大切である』ということなのだと私は理解しています。
同時に、接遇の神髄もここにあると感じています。
プロフェッショナルとして、うっかりミスによるインシデントや説明不足による患者・利用者側の困惑などがないようにする。まずはここからではないでしょうか。
もちろん、仕事をする中でうっかりミスのない人はいないでしょうし、結果的にこちらの説明不足が原因で患者・利用者が困惑してしまうこともあるでしょう。
ただ、ここで大切なのは、ベストを尽くそうとする姿勢であったかどうかということです。
ベストを尽くそうとしてもミスやトラブルとなってしまうことはあるわけで、そこはチームとしてサポートしあい、個人ではなく組織で向き合うことが大切なのです。
正しい言葉遣いやお辞儀の角度といったテクニック的な接遇は、この“心構え”に付随する枝葉の部分でしょう。
もちろん、正しい言葉遣いやお辞儀ができることに越したことはありません。しかし、接遇の幹となる“心構え”が整っていないと問題は繰り返すことになるでしょう。
最後に、テクニックとしての接遇についても少しだけ触れたいと思います。
航空業界やホテル業界、アミューズメント業界に関係する方を講師として招聘し、接遇研修を行う法人・施設も少なくないと思います。
私は、この“他業界に学ぶ”ということは非常に大切なことだと思います。
医療・福祉の業界は、その専門性の複雑さから、他業界の方と触れ合ったり、学びあう機会の非常に少ない業界でもあると言えます。
接遇については、他業界から学びを得ることができる非常に良い機会です。
是非、積極的に他業界から学ぶ機会を設けていただくことをお勧めします。
プロフェッショナルとしての心構えを育みながら、実務的な接遇テクニックについて他業界からの学びを取り入れていくことで、あなたの法人の接遇レベルは、さらに高いものへとレベルアップできるのではないでしょうか。
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